背景:
「それ」はバルディオク(Bardioc)起源の胞子船(sporeship)
パン・タウ・ラ(PAN-THAU-RA)の座標を
ロ−ダンに示し、この船が宇宙の既知領域にたいする大いなる
危険を代表していることを告げた。2隻の船、<ソル(SOL)>と<バジス(BASE)>、
は3586年10月、エラントノヘ−レ(Errantnohere)銀河に到着し、そこで
パン・タウ・ラを発見した。パン・タウ・ラは全長およぞ1100
キロの巨大円筒宇宙船である。パン・タウ・ラの際立った特長の
一つは船の内部のほとんどが通常空間になく超空間にあること
である。パン・タウ・ラの13分の1だけが通常空間にあった。
パン・タウ・ラはいわゆる「オン(On)」と「ヌオン(Noon)」量子の多量の
貯蔵で一杯であった。これらの量子は胞子船がかつて生命と知性を
大宇宙にばらまくのに使っていた。パン・タウ・ラはいわゆる「バイオ
フォレ存在」、オン/ヌオン量子の高レベルの恒常的被爆から生まれ
突然変異した生命形態、の多くにとっての故郷であった。パン・タウ・ラ内部は
一見我々の世界のゲラルド・K・オニールが宇宙コロニーとして設計したもの
とそっくりで山や平原があり、さらには多数の階層や部屋や廊下もあった。
(そう、ちょうどバビロン5とそっくりで、ただずっと大きいだけ。(^_^)
この点で、パン・タウ・ラの地図は真に素晴らしいものだろう。)
物語の始めに、ローダンとおよそ300名の部下は、少数の非テラナー(何人かは 後で登場する)も伴い、ススコーン(Suskohnen)、エラントノヘ−レの1種族、 に仮装してパン・タウ・ラに潜入した。彼らはクオストート(Quostoht)、 通常空間に留まっているパン・タウ・ラの1/13の「最上層」、に到着した。 そこに到達するやいなや、彼らはパン・タウ・ラの上位層に侵入する準備を 始めた。この間、彼らはラルト(LARD)、クオストートを支配する神秘的 存在、の援助を受けた。(いやはや、誰か作者が登場人物に 英語を話す人たちが笑うような名前を付けないようにチェックするのを 手伝う必要があるぞ。訳注:lardは豚の油という意味。)ラルトはローダンの 遠征を助けることに同意し、ロボットやアソゲネン(Asogenen、見掛け上ラルト に忠実なバイオ存在(biophore-entites)の1種族)やファロトブラガー( Fahrotbrager)、噂では交換スイッチ素子を運んでいるという巨大な(長さ30mの) 無限軌道輸送機械を派遣した。この素子がパン・タウ・ラの司令センターに 届けられれば、ラルトは再びパン・タウ・ラの全機能を掌握出来るだろう。
ローダンと部下達はファロトブラガーをエスコートするロボットやアソゲネン を伴いトンネルに入り、クオストートをパン・タウ・ラの残りを隔てている 「パレ境界(Pale Border)」を横切った。いったん通過すると、彼らは 重いメンタル圧力を感じた。近くのオン/ヌオン量子のストックからの被爆の 副作用であった。圧力はアラスカ・シェデレーア以外の遠征メンバーにとって 耐えられるものであった。しかし、彼はこの超心理的な力が彼に埋め込まれた カピンフラグメントに悪い影響を与えていることに気がついた。 アラスカは本隊から離れて、仮面のない彼の顔をみて仲間が狂気に走ることなく ただ一人で仮面を外せる(そしてカピンフラグメントにいかなる損傷が 生じているのかをちょっと見ることの出来る)ようにした。一人になっているときに アラスカはある存在に出会った。始め彼はこれをドウク・ラングア(Douc Langur)、 超知性体テルムの女帝(Empress of Therm)のために働いていた(今も働いて いる?)探索者、であると考えた。すぐにそれはドウク・ラングアではなく 彼の種族の別の成員であることがわかった。このことは、ドウク・ラングアの出生( 彼の種族は明らかにバイオ種族(biophore-beings)のうちの一つである。)を 説明しているが、そのような存在がどのようにしてテルムの女帝の王国で第1級の地位に 上り詰めたのかについては解らない。アラスカはラングアに似た存在と会話を 試みたが、共通言語を持たないため成果を上げる事無く、ラングアもどきは 走りさった。その後、アラスカはロボットのアウグスツス(Augustus)に 出会った。彼もローダン遠征隊の一員で、アラスカを助けるために残った のだ。ロボットならアラスカの仮面のない顔を見て狂気に走ることもないだろう。 二人は、もしアラスカがこれ以上パン・タウ・ラに侵入すれば、カピンフラグメント は死に、アラスカにとってもその死はおそらく致命的であろうという考えに 至った。
その間に、ローダンの部下達は彼らの前方の活動を探知した。あたかも マルゴーン(Malgonen、バイオ種族の別の一員、パン・タウ・ラの 上部領域に暮らしていて過去に繰り返しクオストートへの侵略を繰り返した) が、彼らの隊を待ち伏せしているかのようであった。
他の場所、おそらくはパン・タウ・ラの何処かでオービター(Orbiter)の ツオルグ(Zorg)と呼ばれる存在が原住民からの攻撃を受け逃げようと していた。彼は隠れ場所を見つけ、しばらくそこで、そもそもの始め どのようにして彼がこの困難に陥ったのかを回想した。我々はおよそ100万年 前に場面を移そう。当時はツオルグ、一人のヴォゲ人、は深淵の騎士( Knight of the Deep)のフェイルトのイソグリアン(Igsorian of Veylt)の オービター(察するに小姓のような地位)であった。オービターは、普通 騎士につき従うとき、オービターの宇宙船が騎士の周りの近接した軌道(orbit) を保つことから、そのように呼ばれている。フェイルトのイソグリアンは 最後の深淵の騎士で、彼の船、<ツィッフォ(ZYFFO)>がビルコロッター( Bilkrotter)と呼ばれる種族に攻撃された時に最後に目撃された。ツオルグの 船、<パイエ(PYE)>は攻撃から逃れる事が出来たが、<ツィッフォ>を 救えなかったことにツオルグは責任を感じていた。ビルコロッターが去った後、 ツオルグは<ツィッフォ>の破壊現場に戻り、フェイルトのイソグリアンの アンドロイド助手、ドナーマン(Donnermann)が虚空に浮かんでいるのを 発見した。彼は自己破壊の直前に、フェイルトのイソグリアンがどうにかして <ツィッフォ>の破壊から逃れたことと、イソグリアンの最後の命令は ツオルグが彼を発見することであったことをツオルグに告げた。
次に我々はクオーター・ベル(Krter Bell)、アンスケン(Ansken)の 指揮官を目にする。アンスケンは今パン・タウ・ラの司令センターの ほとんどと胞子船の上部領域の大部分を支配している昆虫型種族である。 アンスケンはオン/ヌオン量子の在庫を使い、パン・タウ・ラ全てだけでは なく外部の惑星までも征服するのに役立つ巨大軍隊を作ろうとして バイオ種族を育成していた。彼らにとって不幸なことに、生成された バイオ種族のほとんどが共食いにしか興味を示さなかった。とは言え、 マルゴーンを生み出したときは彼らにもいくばくかの幸運があった。 いずれにせよ、クオーター・ベルはローダンの遠征隊を司令センターの モニターで監視していたが、まだ自ら事態に介入するつもりはなかった。 遅かれ早かれ彼らはマルゴーンのパトロールに遭遇し、侵入者たちは アンスケンが少し前に用意した罠に突き進むであろうと考えていた。 その罠は予想される侵入者を本物から遠ざけるほど精巧な偽の司令 センターからなっていた。
この間に、コンター・ダム(Konter Damm)というもう一人のアンスケン は司令センター領域の長く未使用の部屋をよろめき歩いていた。彼は アンスケン指導部の帝国主義的な目的に密かに反対し、彼自身は アンスケンの歴史を研究していた。その内部で、彼は一塊の非常に 古い技術装置と死んだアンスケンを発見した。何れも非常に古く触った だけで粉々になった。この部屋の証拠から、ここがかつては実験室で アンスケンがある実験の「目的」であって、それを行った科学者ではない ということが解る。
別の場所では、我々はウインガー人(Wynger)のプロンドフェアー(Plondfair) を目撃する。彼はローダン遠征隊の一員で少人数の探索グループを率いていた。 ウインガー人はエラントノヘ−レ銀河の現住種族の一つで、彼らの宗教は アルス・ラド(Alles-Rad ("All-Wheel")、訳注:全ての輪?)という存在の 崇拝を基礎にしている。アルス・ラドは崇拝者に命じ、大宇宙を巡って 眼(Eye)と呼ばれる神秘的な物体を探させた。プロンドフェアーはこの 宗教とアルス・ラドの動機を疑い、アルス・ラドがラルドと同一人物か かなり近い関係にあるのではと思っていた。何れにせよ、プロンドフェアーと 部下たちは機械の間に潜んでいる存在を発見した。それはオービターのツオルグ であった。いくつかの困難の末、プロンドフェアーはツオルグとの会話に 成功し、彼をローダンの元に連れていった。ローダンはツオルグが遠征に 同行することを認めたが、アトランは疑っていた。(彼はいつもそうでは なかったかな?(^-^))しばらくはツオルグはローダンの部下の誰も 深淵の騎士について聞いたことがないというのを信じることが出来なかった。
アラスカとアウグスツスに戻ろう。アウグスツスは、パン・タウ・ラ内部の 物質転送機の一つに入ればアラスカが何年も前に影響を受けた転送機事故 の状況を多少とでも再現するのに十分な干渉を引き起こせるであろうと 考えた。もし幸運があればカピンフラグメントをアラスカの顔から取り除ける かもしれない。アラスカは懐疑的ではあったが、何もしなければ パン・タウ・ラの何処かで死ぬことは解っていた。