ドルゴンサイクル

ドルゴンサイクル

第1巻: "キャメロットへの攻撃"

モードレッドの攻撃で

キャメロットは危機に陥った

ニールス・ヒールゼランド(Nils Hirseland)著作

ステファン・レクナー(Stefan Lechner)作画

この小説の主な登場人物

カウトーン・ディスペイアー(Cauthon Despair)

キャメロットの堕天使

イワンとセリナ・ディスペイアー(Ivan and Selina Despair)

科学者夫婦はある宇宙的プランの一部である

ホーマー・G・アダムス(Homer G. Adams)

銀河系最後の不死者

 アウレク(Aurec)

サグギター人でペリー・ローダンの友人が来訪した

エディ・アラバン(Eddie Alaban)

彼は反キリストの誕生を確信している

カウ・トーン(Cau Thon)

神秘的な異星人

最初の攻撃

愛を知らないものは憎むであろう。彼にとって、他の何をも 知る機会はない。憎しみが暗黒宇宙の力により定められている なら災いをもたらすだろう。彼はそうせざるを得ない、なぜなら それが彼の運命であるから・・・。

新銀河歴(NGZ)1291年

タグラヴ駆動の力でさしわたし3.5キロメートルの巨大宇宙船は 最後の超光速飛行を終え、ツアリト星域の周縁部の通常空間にゆっくり と再物質化した。ツアリトは恒星ヴォガを巡る15の惑星のうちの第4惑星 である。惑星の首都はタグノルで、700万という惑星最大の人口を抱えている。 星系はアルコンから3.14光年しか離れておらず、水晶帝国の主要植民地と 見なされている。数百隻の船が赤色巨星の近くをパトロールしており 巨船が探知されないことは難しい。しかし、件の戦艦はキャメロット技術に 基づく高度な反探知システムを備えていた。そうであっても、巨船は注意深く 第4惑星に接近した。

船の指揮官は手を背中に組み、司令室の大パノラマスクリーンを見て、 周りのアルコン人の戦艦が侵入者に気付いていないことを見てとっていた。 そのキャメロット人は2メーターを越える長身で、堂々とした体格に黒い宇宙服 をまとっていた。高いブーツ、手袋、そして床にむかってうねったマントを身に 付けていた。ヘルメットは彼の頭を完全に覆い、彼の外観をよりいっそう 際立たせていた。顔はマスクで覆われており、騎士の兜を連想させた。

乗組員のだれ一人として彼の素顔を見たものはいない。9年にわたり、彼らは 他の姿を知らない。冷静に、態度に最大限の敬意を払って、スクリーンの前に 立っていた。誰もあえて彼に話しかけようとはしない。彼の両肩には第一攻撃の 重い責任がかかっていた。9年間の長い準備の後に行動を起こす時は来た。数日前 モードレッド(MORDRED)と呼ばれるテロリスト組織の最高指導者、全組織で ナンバーワンとしてのみ知られている、は攻撃命令を出した。「黒騎士」の支配 下にある<バーダン(VERDUN)>が、ナンバーワンによって、憎むべき敵に第1撃を くらわすべく選ばれた。「黒騎士」はモードレッドのナンバーツーであったが、彼に しかるべき敬意を払わないものはいなかった。かってのキャメロット人は 冷静かつ妥協がないのと同様に冷酷であることから恐れられていた。まさに この資質が彼をモードレッドの副指導者にしたのだ。彼の過去は秘密であった。 モードレッドに加わった者はみな彼を知っている。というのは彼はナンバーワン の右腕の男だからである。しかし、彼の以前の人生について正しく知っていたのは おそらくナンバーワンだけであろう。

速やかにツアリトに到着しても、そのテラナーはじっとしたままであった。

時は来た。ケネス・コーレイ(Kenneth Kolley)という名前の第1将校がのどを ごくりとさせて彼の元に行った。「サー」かれはためらいがちに低い声で 始めた。彼の指揮官の堂々とした姿に対する敬意は明らかであった。

「黒騎士」は向きをかえてテラナーを見た。「何か、提督?」かれはコーレイの 魂を冷やすような不吉な声でたずねた。

「サー、我々はツアリトに到着しました。」コーレイは言った。 「我々はあなたの指示を待っております。」彼はマスクの黒いレンズを のぞき込んだが、どれほど目を凝らしても指揮者の目を見ることは できなかった。

モードレッド内では、各人がお互いに規律正しくなければならない。 略式手続きは、規律を台無しにするので禁じられていた。各人が階級を もっているが、LFTで見られるような外部に示すような区別はない。

「よろしい。」黒騎士は答えた。「巡洋艦に乗船し、基地を発見せよ。」

彼の命令は直ちに実行された。およそ30の訓練された兵士のチームがシャトル に乗船し反探知スクリーンを活性化させた。攻撃目標は直ぐにわかった。 探しているものを知っているときは見つけるのも容易であった。彼は基地が 何処にあるか知っていた。と言うのは第2の人生、最初の運命よりはるかに 暗い人生が始まる前は、それは彼のものだったからだ。

シャトルは戦艦の巨大な格納庫から離陸した。<バーダン>は新しいクエーサー 級の戦艦で以前のウルトラ戦艦と主に大きさの点で異なっていた。太陽系帝国の 最大の宇宙船より直径で1000メートルも大きい。LFTの船はもっと小さい。テラナー の誇りであるノヴァ級戦艦でさえ<バーダン>の直径の4分の1にすぎない。 このことから<バーダン>の本当の戦闘力は以下のように数え上げられる。 トランスフォーム砲100門、何百と言うインターバル砲、インパルス砲 分子破壊砲、熱線砲、トランスフォームロケット1500機、アルコン爆弾50個、 戦闘機1000機、150メートルディストラクション級巡洋艦100隻、シフト1000機、 スペースジェット200機、そして2万人以上の兵士が<バーダン>を宇宙要塞 としている。

メタグラヴ駆動エンジンを備え、戦艦の加速度は毎秒毎秒1300メートル。これは LFTの旗艦<ペーパームーン>より毎秒毎秒180メートルだけ速い。船の指揮官は 黒いテラナー。彼は乗員にとってテラの前原子力時代から来た黒騎士のように 見える。彼の名前は常に最大限の敬意をもって発音される。 カウトーン・ディスペイアー。

*

ャトルはゆっくりとツアリトに接近し、周回軌道に乗った。ディスペイアーは 作戦を一心にフォローしていた。異人の助けで開発された新型反探知スクリーンは 完璧に動作していた。船はゆっくりと惑星の大気圏に消えていった。セキュリティ の理由から通話禁止命令が守られていた。ディスペイアーはシャトルが<バーダン> に戻るまで忍耐し待つほか無かった。

黒いキャメロット人が行きつ戻りつしている間に2時間が経過し、再びシャトル からの通信が入った。アロン大佐、角ばった顔のプロフォス人、は直ちに ブリッジに急ぎ、カウトーン・ディスペイアーに敬礼した。

「報告を。」ディスぺイアーは命じた。

「サー、作戦は完全に成功しました。我々は目標を速やかに発見し、あらゆる抵抗を 排除しました。我がほうには死傷者はなく、敵は全部で25名が死亡しました。基地は 破壊されました。」

ディスペイアーは満足感を感じた。第一段階は完璧である。敵は追い払われた。 ほどなくして基地破壊のニュースは敵の主要惑星に届くことは明らかである。 それでもまだ浮かれる時ではない。そこでカウトーン・ディスペイアーは無口で 自己規制をして明白な感情をあらわにしなかった。まだ敵の基地のある惑星は 多数ある。これらもまた破壊されねばならない。

「提督、<バーダン>をガタスに向かわせよ。」ディスペイアーは言った。 「そこが我らの次の目標だ。」彼はブリッジを離れ、巨大な球形宇宙船は 赤色太陽系を後にし、コースをブルー人の領域の中心に向けた。

*

貨のチンチン鳴る音はホーマー・G・アダムスが朝に聞きたい最初の音 である。彼の家庭用ロボット、ダゴバルト(Dagobert)、は毎朝7時きっかりに この目的のために不死者のベッドの近くに老いてある一皿のコインの中に 手を突っ込んで財務の天才を目覚めさせる。

「おはようございます、ホーマー」人造生物はテラナーにあいさつした。

「そのまま」テラナーは半分寝ぼけながらつぶやいた。彼は大きなベッドに だらりともたれかかり、半ば寝ぼけた目で人間そっくりに作られた金色の ロボットを見た。アダムスはうたた寝に戻りたいという誘惑に駆られた かもしれないが、ガチャガチャいうコインの音は刺激的すぎた。

「今日は何の日だっけな?」不死者は人造の執事にたずねた。

「今日は月曜日です。月曜。」機械人間は、主人にとって 月曜日が何を意味するかをホーマー・G・アダムスが良く知っている ことを知って答えた。

小柄なテラナーは直ぐにベッドから飛びだし、2〜3回膝の屈伸を行い バスルームに入った。数分後、彼は再び現れた。

「忘れるところだった・・・。」彼は体からパジャマを取りながら独り言 を言った。彼は洋服箪笥から幾分古風なスーツを取り出し身につけた。

「ロルフ・フリーベル(Rolf Friebel)に繋いでくれ。」彼はダゴバルトに 命じ、ダゴバルトは直ぐに従った。

ビュースクリーンにはTAXITの副代表の髭の生えた顔が現れた。 「おはようございます、ホーマー。」フリードベルは愉快にあいさつした。 「貴方を待っていました。」

フリードベルは80台半ば、まさに男盛りで、ホーマー・G・アダムスと 一緒にTAXITを築き上げた。アダムスが不死者としての義務を果し 銀河系を外敵やそれ自身から守らねばならないときは、ロルフ・フリーベルが TAXIT、宇宙ハンザ同盟の強力な対抗勢力に成長していた、を指導した。 アダムスとフリードベルは共に純然たる財務の天才であったが、無類の ケチでもあった。彼らにとって、「倹約の週」は何度もやってくる 毎年、彼らが守る慣例であった。彼らは1年のうち1週間は山に隠遁し 丸太小屋でスパルタ式の生活を送る。アダムスとフリーベルにとって 技術と文明から引き離された生活は一つの挑戦であった。彼らは完全に 自活し自然を楽しむことが出来た。彼らはいくつかの銀河、彼らにとって 魅力的な伝統を築いた銀河、を一度に救った。ブリーやグッキーは彼らの やり方をいつもからかっていたが、彼らは気にかけなかった。ゴエッダと ダシェローのトラブルの後、不死者は休息を要した。戦いの間に、多くの 人々、そして彼らの不死者の仲間ミラとナディアのヴァンテマー姉妹すら 命を落としたのだ。アダムスはこうした全ての事件から距離を置きたかった。 アダムスはスーツケースを軽やかに持ち上げると、ダゴバルトに最後の指示を 与え、ロルフ・フリーベルを拾い上げるためグライダーに急いだ。

*

かく静かな夜であった。星は夜空に明るく瞬き、見上げる二人の男たちを 和らげる効果があった。コオロギの声だけが大気に加わった。小屋は小さな 丘の上にあった。約100メートル下には小さな湖があり、山々の麓、谷の底 になっていた。

大気は済んで見通しが良かった。はるか遠くまで銀河系人の姿も声も 無かった。二人の男は小屋のベランダにロッキングチェアーを置いて 腰掛けていた。

ロルフ・フリーベルはビールを一瓶開けて一飲みした。顔をゆがめて ゲップを出した。「こいつは一体、何と言うビールでしょうかね?」

「グレーブシュテイナー(Gravesteiner)だか、なぜかね?不味いのかね?」

フリードベルは身震いした。「ひどいもんです。」

アダムスは自分の瓶を開け一口すすった。彼は眉を少しひそめた。 「まあ、一番安い酒だからな。」彼は返事した。

他に言うべきことは何もなかった。フリードベルはもう一口飲んだ。 「ふーむ、それなら、ましなほうでしょうか。」彼はにやりと付け加えた。

シャトルは谷底に接近し小屋のすぐ上に浮遊した。そのスポットライトは 二人のテラナーを見つけ出し、彼らは盲にならないためには手で目を 覆わねばならなかった。シャトルは湖のとなりに着陸し、制服の男が 走ってきた。彼は長身でやせており、動きはひどく興奮していた。アダムス はすぐにその男が誰かを悟った。タイラス・ランヌス(Tyrus Rannus)、 キャメロットの保安部のチーフであった。

ランヌスは不死者に急いで敬礼すると報告を始めた。「ツアリトへの 攻撃・・・、みんな殺されて・・・基地・・・!」彼は興奮のあまり 吃りながら喋った。

「君の言うことは一言も理解できないよ。」アダムスは叫んだ。「ツアリト で何があったのだ?」彼は、始めは「倹約の週」を邪魔したことで キャメロット人を非難しようとしたが、何か重要なことが起こった 様に見えた。

「ツアリトの我々の基地は未知の敵に破壊されました。」ランヌスは もう少し理解しやすいように言った。

アダムスの体を強い衝撃が走り、彼の表情は真剣になった。彼は事態を 呑み込み、フリードベルの顔を見た。彼も同様に真剣な顔であった。 「今年の倹約の週を中止しなければならないんじゃないかと恐れるよ。 ランヌス、事務所に戻ると直ちに攻撃についてのもっと詳細な 報告が欲しいが、解ったかね?」

ランヌスは了解し、おぼつかない足取りでシャトルまで歩いて戻った。アダムスは スーツケースとグライダーを小屋に残しポート・アーサー(Arthur)まで シャトルで飛ぶ方を選んだ。

彼が事務所の建物に到着するや否やあらゆるところから人々が彼の元に やってきた。キャメロット新聞は災害のことをすばやく聞きつけ、アダムスから 状況を引きだそうとしたが、ヨーロッパ系テラナーはこれを拒否した。 保安部の職員がジャーナリスト達を押し戻しアダムスはようやく政府の建物の 隔離された区画に進むことが出来た。そこでもまた興奮か支配していた。 何が起こったのか誰も正確には知らなかった。ツアリトの秘密基地との コンタクトは失われてしまった。その後、IPRASAの多くのメンバーが キャメロットの基地に赴き、荒廃した本部と多くの死体を発見したのだ。 この凶報は直ちにキャメロットに送られた。

「恐ろしい眺めです。」IPRASAのエージェントはホロ映像で報告した。「 キャメロット人の遺体があちこちに横たわっています。明らかに彼らは 不意打ちに遭い虐殺されたのです。おまけに建物には放火されました。」

アダムスは記録を何度も見たが、犯人を特定できる手掛かりとなるものは 何も見出せなかった。夜は非常に長くなりそうであった。

別のチームがツアリトに派遣されたが、銀河系のいかなる政府、特に 水晶帝国の植民政府、はキャメロットの基地を許容するはずもないので 人員の派遣は秘密裏に行なわねばならなかった。このチームも、総員25名の 死の悲しい確認の他には新しい情報は見つけることが出来なかった。幾人かは キャメロットに家族を残していた。その夜、アダムスには犠牲者の縁者に 愛する人々の死を知らせるというありがたくない仕事があった。

その間、ツアリト警察や水晶帝国の保安サービスが攻撃の背後にいるのでは という可能性は否定された。というのは、これらの権力グループは 憎むべき敵に対する自らの勝利を秘密にしておくはずがないからである。

神秘的な敵の第二の攻撃に備えて他の全てのキャメロット基地は警報下に おかれた。

*

円盤型の宇宙船はかつての自由商人の惑星フェニックス、今はキャメロットと 呼ばれる、にゆっくりと接近した。<サグリトン(SAGRITON)>は<バジス> に似た設計で、船体は直径5000メートル、厚さおよそ1000メートルの円盤状 である。その上には多数の塔やドームがあった。最大の塔は高さ300メートルで 一番上のドームは直径およそ250メートルであった。

<サグリトン>はサグギター(Saggittor)銀河のサグギター共和国の 旗艦であった。同銀河は、M64、ブラックアイという名前で銀河系人には なじみが深い。サグギターは天の川銀河から4400万光年離れている。

アウレク(Aurec)、<サグリトン>の司令官でサグギター銀河の長官、は 天の川銀河に到着するのを早くから待ちわびていた。NGZ1285年、彼は テラの快楽宇宙船<ロンドン>に出会った。船上にはペリー・ローダンが 乗っており、当時、彼はスルエル・アロック・モク(通称サムと呼ばれる ソマー人(Somer))をキャメロットに引き入れようとしていた。誤解により 最初、テラナー達は敵とみなされ<サグリトン>に連行された。しかし、 ペリー・ローダンは、アウレクに銀河系人の平和意図を納得させることが できた。二人は急速に友情を築き、これがサグギター銀河での彼らの 冒険の支えとなった。暗黒の秘密がサグギター銀河を覆っていた。と言うのは 混沌の勢力がそこに何千年も基地を置いていたからである。ロドロム(Rodrom)、 カオタークのモドラー(Modror)の具象化、はローダンがこの銀河系に いることを発見し、深淵の騎士、即ち秩序の戦士を打ち負かそうとした。 彼はサグギター人の謀反者に加わり、アウレクの家族を殺害した。その なかには彼の父でサグギターの長官も含まれていた。

<ロンドン>は並行宇宙で難破し、そこでローダンとアウレクはロドロムの 危険な傭兵から自らを守らねばならなかった。ようやく彼らはこの脅威に 打ち勝ち謀反者を倒し、そしてカオタークの基地に攻撃をかけて破壊する 事ができた。

その後、<ロンドン>は天の川銀河系に帰還したが、ローダンとアウレクは 相互訪問を約束した。今、若いサグギター人は約束を果そうとしている。

サグギター人はヒューマノイドであった。ほとんどが黒い髪と黒い肌を持ち 南ヨーロッパ人に似ていた。彼らはテラナーと同じ技術レベルにあり、 道徳意識ははるかに進んでいた。過去5年間にアウレクは人民のために 大いなる貢献をし、彼の銀河系をこれまでに無く統一した。そうは言っても、 このカリスマを持った男はいつもはるかな水平線を見つめる冒険者であった。 そのため、計画された訪問は決まり切った日常を変える喜ばしいものであった。

彼の訪問のもう一つの理由は、テラナーのシール・ノルカト(Shel Norkat)で あった。彼は彼女に恋していたが、彼女は始めこそ彼の気持ちを受け止めたが 後に彼を裏切ったのだ。5年の長い間、彼は彼女と二度と会いたくないかのように 考えていたが、今やもう一つの試みをする用意が出来ていた。

アウレクは青白色の制服に身を包み、暗い青色のマントをはおっていた。 彼はテラナーの年で32才で、身長1.81メートルで、運動選手のような体格を していた。彼は生まれ付きのカリスマを持ち、一目見るだけで好ましい 若者という印象を与えている。

<サグリトン>はセレス(Ceres)星系に到着した。直ちに敵対する侵略者の 印象を与えないように通信が発せられた。

「異船に告ぐ、身元を明らかにせよ。」一組みの見張り船が<サグリトン>に 接近しつつ命じた。

「私はアウレク、サグギター共和国の長官。私はペリー・ローダンと 会談するためにやってきた。」

*

「ホーマー、あなたにお客です。」不死者の秘書が興奮して言った。

アダムスは過去24時間眠っておらず、疲れていた。「何もいまごろ、 フィリス(Phillis)。」彼は抗議してその女性に抵抗しようとしたが 彼女は訪問者の件を主張した。

「申しわけありません。でもここにペリー・ローダンとの会見を希望している 方がいらっしゃいます。彼はサグギター共和国の長官と名乗っています。 彼はキャメロット上空の軌道にある直径5キロメートルの船に乗船しています。」

船の大きさを聞いてアダムスは目を丸くした。始めは警報をならそうとした、 というのは神秘的な敵がこの背後にいると疑ったからだ。しかし、すぐに アウレクという名前が彼の記憶にベルを鳴らした。5年前、ペリー・ローダンは 彼に巨大御楽船<ロンドン>での彼の冒険とこのサグギター人について話をして いた。明らかに、サグギター人は今ペリーを訪問しようとしているのだ。しかし、 ローダンはここの所トレゴン連合の仕事で不在で、今どこにいるか正確に知る ものはいない。アダムスが天の川銀河に残っている唯一の不死者である。 他のみんなはそこかしこの異銀河に留まっている。

「サム(Sam)にアウレクの訪問を知らせておくれ。」アダムスはフィリスに 話した。ソマール人(Somer)はアウレクに会って今キャメロットにいる 唯一の人物である。

青いソマール人は丁度10分で会議室にあらわれたが、其処にはアダムスしか いなかった。二人の良く知られた人物、ジョーク・カスカルとサンダル・トーク、 は時間通りにはあらわれなかった、と言うのは彼らはアンドロメダからの帰途に 会ったからである。かつて、彼らは<ロンドンII>の航海で時空断層から 発見され、冒険の後キャメロットに参加したのである。カスカル、太陽系帝国の 時代からのベテラン、は新しい球形宇宙船<タクヴァリオン>の指揮権を 与えられ、最初のテスト飛行を行おうとしたのであった。おそらく、彼は 直に謎の的に対して行動を起こすであろう。

アダムスはアウレクを親しく遠慮がちに歓迎したが、サムとアウレクはお互いに 心からあいさつした。アウレクはソマール人に<ロンドン>とその乗客がどう なったかを話すように頼んだ。サムはサグギター人に悲劇を話した。ロドロムは 帰途中の<ロンドン>に攻撃を加え、ある水惑星上で撃墜した。宇宙船は 水没し、それと共に11000人が死んだ。僅か4000人が生き延びる事が出来た だけであった。アウレクにとって落胆したことには、シール・ノルカトも この悲劇の間に命を落としていた。

アウレクはこの悲しい知らせから立ち直るのに数分かかった。「それでは、 私はペリーと話がしたいのですが。」

「残念ながら、ペリーは此処にはいません。」アダムスは辛そうに小声で 言った。

「彼は何処に?」アウレクは知りたがった。

「我々も正確には知らないのです。」不死者は静かに説明した。「彼と レジナルド・ブルは宇宙的重要性のある使命の途中です。そのほかにも、 彼は危険な敵から銀河系を守らねばならないのです。」

アウレクはアダムスの口調に気付き、コメントした。「私の訪問はどうやら ふさわしく無い時期だったようですね。」

ホーマーは立ち上がって否定の身振りをした。「そんなことはありません。 あなたはここで歓迎いたします。ペリーの友人は私の友人でもあるのですから。 たまたま昨日から我々はもう一つの問題を抱えているのです。アルコンの 植民地におかれた我々の秘密基地が未知の勢力によって破壊されたのです。」 アダムスは再び広いシートに腰掛けた。

今度はアウレクが立ち上がって部屋を横切って歩いてきた。「私が此処に いる限り、お役に立ちましょう。あなたがたの調査のお手伝いをさせてください。 ペリーも私の銀河で同じ事をしてくれるでしょう。」

サムはアウレクの申し出を歓迎することを直ぐに述べたが、ホーマーはまだ 少しためらっていた。彼はサグギター人の事はほとんど知らないが いくらか親しくなったようには思っていた。「私から頼むことは出来ませんが 我々は手にはいるだけの援助を使うことが出来ます。」

「それなら、我々は合意に達したわけです。いずれにせよ、私は過去5年間 冒険を探していましたから。」

30年前・・・。

NGZ 1261年始め

ネレス(Neles)、ソル系より45893光年かなた。

また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と 七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神を けがす名があった。

私の見たその獣は、ひょうに似ており、足は熊の足のようで、 口はししの口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と位と大きな 権威とを与えた。

また、人々の前で、火を天から地に降らせるような大きなしるしを行なった。

また、あの獣の前で行なうことを許されたしるしをもって地上に住む 人々を惑わし、剣の傷を受けながらもなお生き返ったあの獣の像を造るように、 地上に住む人々に命じた。

それから、その獣の像に息を吹き込んで、獣の像がもの言うことさえも できるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。

また、小さい者にも、大きい者にも、富んでいる者にも、貧しい者にも、 自由人にも、奴隷にも、すべての人々にその右の手かその額かに、刻印を 受けさせた。

また、その刻印、すなわち、あの獣の名、またはその名の数字を持って いる者以外は、だれも、買うことも、売ることもできないようにした。

ここに知恵がある。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。その数字は 人間をさしているからである。その数字は六百六十六である。

「聖ヨハネの黙示録、13章」(訳注:口語訳(日本聖書協会)より引用)

星ネレスは20世紀の地球に似ていた。ヒューマノイドのネレス人は宇宙航行 技術の発見からそれほど遠くないレベルにいた。そのことは、テラナー アルコン人、ブルー人、トプシダー、スプリンガー等の天の川銀河の多くの 種族との出会いが遠くない事を意味していた。

その惑星は自立し、フォーラムラグランド、LFTあるいは水晶帝国のいずれにも 吸収されないチャンスがあったので、ペリー・ローダンはキャメロットから 研究チームを派遣しネレス人をより身近で研究させ、彼らに宇宙には自分たち 以外の他の種族がいることを伝えさせた。

科学者チームは8名の男性と4名の女性からなっていた。チームの指導者は イワン(Ivan)とセリナ(Selina)のデスペイアー夫婦、 若く高い能力を持った科学者夫婦、で あった。彼らは速やかに山岳地帯の外れに小さなベースキャンプを設立し 発見されること無く行動できるようにした。周りの環境は美しかったが 時として憂鬱な気持ちになる所であった。

イワンは2年のうちにネレス人は自らの星系を離れる事が出来ると評価した。 この星系はどちらかと言えばへんぴなところにあるので、彼らがすぐ銀河 種族と出会うことはありそうになかった。そうであっても、キャメロット人は ネレス人が出会う最初の異星人となるであろう。

10ヶ月の徹底的な研究の後、イワン・ディスペイアーは自分たちの正体を あらわす時期がきたと信じた。彼の妻も、ロン・ホーレス(Ron Horace)、 エディ・アラバン(Eddie Alaban)、そしてジル・レーカン(Jill Reekan)と 共に彼に付き添った。ロン・ホーレスは冒険家タイプで至るところに危険を 見つけいつもヒーローの役割を果そうとしていた。エディ・アラバンは チームの最長老で物静かで注意深く見えた。彼は熱心なクリスチャンでも あるが、この千世紀にあってはなにか滑稽でもあった。ジル・レーカンは カールした褐色の髪とめたっだ所の無い顔の平均的な女性であった。 彼女は密かにロンにねらいを定めていたが、彼は彼女の気持ちに答えたこと はなかった。彼女は子供を非常に欲しがっていたが、今のところ彼女の 夢は満たされないままであった。

代表団は政府と無線でコンタクトをとり会見に合意した。ネレス政府は 会見を極々秘密裏に行うようにアレンジした。ルラッツ・ヨマー(Luratz Jomahr)が惑星の首席大統領であった。小柄で太った男は 人々に特別に尊敬されているわけではなかった。というのは彼はキャンペーン 用の公約をかなり守っていなかったからである。彼はネレス外の生物の 力で権力の掌握を補強したかったのである。多くの警察の車輌が姿を 表し、配置についた。結局のところ、異星人は危険かもしれないのだ。 ネレスの保安長官、アルラッツ・ウリナ(Alratz Urina)、は何度も警告 したが、ヨマーは異星人を信用した。

そして、時間がやってきた。キャメロット人はグライダーをネレス人の 100メートル前に着陸させた。イワンとセリナのディスペイアー夫妻が最初に 進み出て惑星の住民と会見した。風はセリナの褐色の髪を優しく波立たせた。 ホーレス、アラバン、レーカンが数メートル後に続いた。反対側から 首席大統領が他の2人の首席と警察の将校を2人従え、彼らにとっての 異星人達に接近した。2つのグループは互いの正面で停止し、沈黙の ままお互いを見つめた。

イワン・ディスペイアーが最初に沈黙を破った。彼は有効の印にヨマーに 向かって手を広げた。既にここの言葉を習っていたので会話の問題は無かった。 「ハロー!私はイワン・ディスペイアー。私は惑星キャメロットを代表 していて、テラナー種族のメンバーです。我々は平和目的でやって 来ました。」

ヨマーと他のネレス人がその言葉を吸収するのにしばらくかかった。幾分 混乱して、彼はキャメロット人に話しかけた。「あなたは私の言葉を 話している・・・!」これが彼の第1声であった。

ディスペイアーは ほほ笑んだ。「我々はあなたがたの言葉を研究していました。私のチーム と私はネレスで既にあなたがたのおよそ1年を過ごしていたのです。」

惑星ネレスはその太陽を巡るのに10ヶ月を要し、結果として地球に 似ていた。その重力もまた地球とほぼ同じであった。

ヨマーは彼の随員をちらと見たが、彼らは殆どわからないほどうなずき 返しただけであった。そうして、彼はもう一度テラナーに向き合った。 「私は心よりネレスにようこそとあなたがたに言いたい。私の名前は ルラッツ・ヨマー。私は我々の美しい惑星の首席大統領です。教えて 頂きたい、なぜあなたがたが此処に来たのか?」

「この件はどこか他で議論できませんか?」セリナは提案した。というのも 彼女は寒さを感じていたからだ。

「なぜ、もちろんですとも。私の行儀作法は何処へいっったのだ。 どうぞ、私とご一緒に。」

ヨマーはディスペイアー夫妻と他の3人をグライダーに案内した。それにより 彼らは政府の建物に飛んだ。そこでは、祝宴が惑星ネレスの新しい友人を 待ち受けていた。イワンとセリナのディスペイアー夫妻はヨマーと 何時間も談話し、なぜ彼らが此処に来たかを説明した。

「あなたの人民は直に他の惑星への旅行が可能になるでしょうから、私達は あなたに銀河系がどのような状況にあるのか、そしてあなたがたが出会うで あろう様々な種族にたいしてどのように備えるかを話したいと思います。」 イワン・ディスペイアーは彼に話した。彼は短い癖のある髪を手ですいた。

ヨマーは幾分驚いた。「あなたがたのふるまいは非常に高潔ですが、 何かそこに危険があるようにおっしゃるのですか。」

「その通りです。あたたがたの独立を抑圧するのを喜ぶ種族がいくつか います。ネレスをこの運命から救うため、我々が最初にあなたがたと コンタクトしようとしたのです。」

「あなたがたが我々を占領しようという意志が無いことがどうして 我々に解るでしょうか?」保安長官が疑いぶかげにたずねた。

「あなたがたは我々を信用して下さらねばなりません。けれども、 もし我々が敵意を持って来たなら、我々の技術レベルを持ってすれば あなたがたと話す必要は無かったでしょう。」

これらの言葉はすぐに効力を無くした。ネレス人はすぐに彼らが 銀河系のごく一部に過ぎないことを示された。このように、キャメロット 人と共に働くことはネレスにとってより大きな利益となるであろう。

「私はあなたがたを信用する。」ヨマーは彼の人民の利益のために 言った。

*

都ロングトン(Wrongton)の周辺部のいくつかの建物がキャメロット人 に提供された。そこで、彼らはネレスの指導的科学者達と宇宙駆動機関の 開発についての仕事をした。

ネレス人はまだ原子力技術を使っていた。これは人体に破壊的影響を及ぼす 可能性がある。ペリー・ローダンの合意を得て、キャメロット人はネレス人が より高い技術レベルに到達するのを助けたいと考えた。けれども、ディスペイアー 夫妻はネレス人の道徳レベルが技術に釣り合うように気を配らねばならなかった。 技術の進展は極めて注意深く導入された。

NGZ1262年始め、原子力発電施設で小規模な事故があり、セリナはいくばくかの 放射線を浴びたが生命を脅かすほどのものではなかった。イワンは調査遠征を 中断しキャメロットに帰ろうとしたが、妻は強く継続を望んだ。

2ヶ月後、奇妙な出会いがあった。長さ500メートルのH型の宇宙船が ネレスに着陸した。この種の宇宙船はキャメロット人の全く知らないもの であった。安全のため、着陸地点は封鎖され警察の大部隊が派遣された。

セリナ・ディスペイアーは再び自らの足で立ち、イワンとロン・ホーレス が宇宙船を見に行こうとしたとき同行する様に強く主張した。

その場に居たのはルラッツ・ヨマーだけであった。すぐにロン・ホーレスは 危険の臭いを嗅ぎ付けたが、イワンは友人の過剰反応する癖を良く知って いた。彼は待機して事態がどう進展するかを見ようと決意した。

入り口が開き傾斜路が地面に向かって伸びていった。警官は射撃用意の姿勢をとり 誰もが内部の異星人が現れるのをいらいらと待った。黒ずくめのヒューマノイド の姿がゆっくり現れ、悠々と船から歩みでた。彼は頭を覆うフード付の黒いマント を羽織っていた。マントの下には黒いブーツと手袋が見えた。右手には、端に 2つの角のある犬に似た動物の装飾を施した杖を持っていた。異星人は人々に 近付き、ヨマーとディスペイアー夫妻の前で立ち止まった。彼が頭を上げた時 彼の顔が見えるようになった。赤い顔で目には金色の輝きがあった。見分け られる限り、その生き物には頭髪が無かった。奇怪な入れ墨が頭に見えた。一寸 創造力を働かせれば、そのパターンに3つの6という文字が見分けられた。

「ようこそ、異人よ!」首席大統領は彼を歓迎した。「あなたは何者ですか?」

「単なる旅行者・・・。」異星人は答えた。彼は冷たく不吉な声でしゃべり、 ネレス達はその声にゾッとした。「私の名前はカウ・トーン(Cau Thon)。 宇宙の驚異を体験しようとしている探検家だ。」

「あなたはどの種族に属するのですか?」セリナ・ディスペイアーはたずね、 幾分いらいらと眺めながら、夫を小突いた。「あなたは天の川銀河の出身で はありませんね?」

カウ・トーンは女性に向き直った。彼の目は彼女を貫かんばかりであった。 彼女は腹部に、まるで何かが動いているかのような奇妙な感じを受けたが 若いテラナーはつかの間の不快感を見せなかった。

「我々はこの銀河の出身ではないので、おまえたちは私の種族を知らない。」

ホーレスは異星人に詰め寄った。彼は全く信用していない様に見えた。

「それで、なぜあんたはここに来たんだ、カウ・トーン?」イワン・ディスペイアー は幾分挑発的にたずねた。「この惑星は巡行経路からは外れている。 旅行者にはネレスよりずっと興味深い場所があるだろう。」

「それは何を探しているかに依る・・・。」

会話が不快な方向に向いていたので、ヨマーは再び話した。「カウ・トーン、 私達の客になってください。あなたは宇宙からの2番目の訪問者で私達の 世界に栄誉を与えてくれました。このことが続けば、私達はすぐに銀河系で 重要な位置を占めることになるでしょう。」首席大統領は冗談を言い、 グライダーの方に身振りをした。

カウ・トーンはゆっくりうなずき同行することに歓迎の意を示した。 ディスペイアー夫妻とロン・ホーレスも飛行機に向かった。

「ネレスは実際宇宙的な重要性を持つだろう・・・。」グライダーに乗る前に カウ・トーンは自らにささやいた。

*

宴の間、カウ・トーンは殆ど喋らなかった。報道機関は参加を許されなかった。 数名の閣僚とキャメロット人が列席した。

異人は殆ど飲み食いしなかった。彼はフードをとっていたので、 その生き物に頭髪が無いことは今や明らかであった。

「どの銀河からあんたは来たんだい?」ホーレスは尚もカウ・トーンを 疑いぶかげにたずねた。

「私の故郷銀河ははるか彼方だ。お前にはその距離が理解できないだろう。」 カウ・トーンはそうこたえ、他に何も言わなかった。

「あんたはおれたちが馬鹿だと言っているのか?」ホーレスは詰問した。

カウ・トーンは無口で挑発に応じなかった。「いや。技術的な観点では おまえたちは我が種族の下にある。おまえたちがネレス人より技術的に すぐれているからと言って彼らが非知性的だと、お前は思っているのかね?」

ヨマーは緊張してキャメロット人を見て、彼の答えを待った。

ホーレスは内心穏やかでは無かったが冷静さを保った。「もちろん、違う。」 彼は静かに言った。

「それなら、もう言うべきことは無い。」カウ・トーンは結論付けて 事態をまとめた。

けれども、イワンとセリナのディスペイアー夫妻は異人についてもっと 知りたかった。

「あなたの旅について話してください。」イワンは提案した。「我々、銀河系人 もまた大距離をやってきました。おそらくお互いの知識を増すことが 出来るでしょう。」

カウ・トーンは彼に向き直った。「時が熟せば・・・。」彼の視線は セリナに注がれた。彼女は時間がたつうちに静かになっていた。

「どうかしたのか、セリナ・ディスペイアー?」赤肌の異星人はたずねた。

セリナはうなずいた。顔色は真っ青であった。「気分が悪いの。」 彼女は説明した。

「一緒に家に帰ろう、おまえ。」夫は心配して言った。放射線事故の 長期効果かもしれないと心配したのだ。

カウ・トーンは立ち上がり夫妻の方に行った。「恐れることはない。 彼女は自然なプロセスに従っているだけだ。」彼は手を彼女の下腹部に 置き、目を閉じた。部屋の誰もが、異人が何をしようとしているのか 解らなかった。

「どんな自然プロセスだと言うのか?」イワンはうろたえた。「妻は 放射線事故の犠牲者だ。これはその後遺症だと思うが。」

カウ・トーンは生粋テラナーの胃から手を離し、一同を見回した。 「いや、子供が彼女の中で育っている。」

*

師達はカウ・トーンの結論を裏付けた。セリナは実際に妊娠していた。

始めは夫妻の喜びは際限がなかったが、医師達はすぐに陶酔から引き戻した。 セリナの子宮の一部が放射線で損傷を受けていたのだ。正常な分娩はもはや 不可能である。胎児は次の2〜3カ月で死ぬか奇形に育つであろう。

セリナは病院から退院した。キャメロット人の医師、ステファン・ブリンク( Stefan Brink)の検査でも何ら良い結果は出なかった。子供はおそらく母親の 体内で死ぬであろう。

泣きながらセリナは夫の手にもたれこんだ。どちらも子供を待ち望んでいた。 彼女の最初の子供が死ぬばかりではなく、もう一人の子供を持つことも出来ない であろう。27才のテラナーにとって、世界が崩壊したかのようであり、 イワンにとっても耐え難い悲しみであった。

一方では彼は妻を慰めねばならないが、他方彼を慰めてくれる者は誰だ? この苦痛を克服する手を差しのべるのは誰だ。ディスペイアー夫妻に とって暗黒の一日であった。

セリナは午前2時になってようやく眠り込んだ。ブリンク医師が彼女に 鎮静剤を与えたのだ。しかし、イワンはそれを拒んだ。彼は部屋を 歩き回った。小さな少年あるいは小さな少女の十分な空間があった。 ネレスは平和な惑星で子供が育つには理想的な場所であった。イワンは 息子にあらゆることを教え、一緒にサッカーや野球をすると言うのが どういうものかを空想した・・・・が、この夢は決してかなえられない だろう。涙が彼の頬を伝った。彼は涙を恥ずかしいとは思わなかった。

「おまえの苦痛を終わらせる方法がある。」ディスペイアーは暗く静かな声を 聞いた。彼は直ちに向き直り、カウ・トーンが忽然と居間に立っているのを 見た。

「どう・・・どうやってここに?」彼は顔の涙を素早く拭ってどもりながら 言った。

「鍵は障害ではない。」黒い衣装の異人は言った。「おまえとおまえの妻を 助けにここに来た。」

「でも、どうやって?あんたには私達を助けられない・・・。」

本当にそう思うのか?私はおまえが夢にしか見たこともない医療技術 をこの手にしているのだぞ。」

その言葉にディスペイアーは耳をそばだてた。彼は、カウ・トーンが セリナの子宮の損傷を治療できるのかとたずねたが、異人のこたえは ノーであった。

「しかし、胎児を代理母に移すことは出来る。転送機技術を持ってすれば 胎児とへその緒を別のテラナー女性に移せる。そして彼女が子供を 育てることになろう。」

「なぜあんたは私達のためにこんなことを?」イワンはたずねた。 「今まで、我々はあなたを少しも信用していなかったのに。」

「私はおまえたちの友人だ・・・。」

*

リナも手術に同意した。ブリンク医師は手術をキャメロットで行なうように 提案したが、カウ・トーンは時間がないと感じていた。いまや問題は赤ん坊を 育てる代理母を探すことであった。

ジル・レーカンが志願した。子供を持つことは彼女の日頃の夢であり、 いまや少なくとも子供を産むことができる。

手術はさしたる困難無しに進んだ。マイクロフィクティヴ転送機の助けで カウ・トーンは胎児をジル・レーカンの体に移し、へその緒と胎盤を結合 した。

ジルも子供も手術から速やかに回復した。セリナとイワンはカウ・トーンに 感謝し、異人に対しての偏見を忘れた。それに続く数週間、数ヶ月間は セリナとジルはほとんどの時間を一緒に過ごし、子供部屋ための家具を探し 続けた。

エディ・アラバンは子供のために毎日祈った。ホーレスは老テラナーの信仰 をしばしばからかったが、エディは嘲りを無視し健康な赤ん坊が生まれるように 祈り続けた。カウ・トーンは惑星と住人の研究を行ない、ほとんどの時間を ネレス人をよりよく知るため彼らとと過ごしていた。彼は特にネレス人の若者に 興味を示した。イワン・ディスペイアー、ロン・ホーレス、マテウ・コーチ( Matthew Koch)、そしてブルー人のヴェルヴィラエ(Va"lu" Vilo"a")は 調査ステーションでの仕事を続け、これをキャメロットの公式基地とする 考えが生まれた。イワンはキャメロットからの許可を得た。彼が申請を 出したときにはレジナルド・ブルと個人的に話さえした。

彼は太目の不死者と話すことを許され、誇りに思った。彼はネレスがどれくらい 美しいか、ここにキャメロット基地を築くのをどれくらい望んでいるかを 話した。ブリーは反対意見を述べず、この決定にお祝いを述べた。

その間に、子供の性別が確定した。少年であった。彼の生命を救ったことを たたえて、彼は英語流に発音するもののカウトーンと名づけられた。 この事は、カウ・トーンを大いに喜ばせたように見えた。

NGZ1262年10月1日、時はやって来た。セリナと会話の最中にジルは陣痛を 覚え、直ちに病院に行かねばならなかった。エディが二人を診療所に送り 届けた。天候は荒れて雨はどしゃ降りであった。

子供が産まれると同時に、雷光が発電所に落ち明かりが消えた。

「良い印だ。」イワンは代理母の腕に抱かれている小さな子供を見て言った。 しかし、セリナはつかつかと子供の元に歩み寄ると自分の手で抱いた。 そして、イワンは妻と小さいカウトーンを抱きしめた。家族の喜びは 完全であった。ロン・ホーレス、マテウ・コーチ、そしてヴェルヴィラエは 夫妻にお祝いを述べた。しかし、エディは赤ん坊をみてショックをうけて いた。彼は少年のほとんどはげた頭に、カウ・トーンの頭のマークに似た あざを見つけた。ちょっと想像力を働かせれば666と見分けられた。 ショックでしり込みしながらエディは部屋から飛び出した。

「神よわれらを救いたまえ・・・。」彼はつぶやきながら診療所を 離れた。一言も口をきかずにカウ・トーンの傍らをすぎた。異人はテラナーの 去るのを冷笑を浮かべて眺めていた。

「そう、子供にとって良い前兆だ・・・。」カウ・トーンは一同に加わる前に 自らに話し掛けた。

*

ル・リーカン、セリナ、イワンはカウ・トーンと一緒にディスペイアー家の ベランダで楽しい夜を過ごしていた。

ジルは心底幸福でないことは明らかであった。彼女はしばしば自分の子供のことを 話し、それはカウトーンのことであった。イワンは彼女には時間が必要だと 思った。彼女が夫と自分自身の子供を見つければ、もっと違った風に考え 話すであろう。

「二人に感謝して」イワンは唱えてグラスを上げた。「カウ・トーンと ジルがいなければ息子は死んでいただろう。あなた方は真の英雄だ。」

カウトーンが泣き出し、ジルとセリナは同時に立ち上がった。

「お願い、私に見に行かせて、お願い。」ジル・リーカンは頼み込んだ。

セリナはどうすべきかわからなかった。

「まだ終わったわけじゃないの。どうか、もうちょっと時間をちょうだい。」 ブルネット系テラナーは付け加えた。

セリナは同意した。ジルは喜んでカウトーンの元に駆け寄りほ乳ビンを 与えた。彼はかわいく無邪気な赤ん坊らしく呑み込んだ。

カウ・トーンは彼女らをしばらく眺めて、それからディスペイアー夫妻に 向き直った。「おまえの息子がこの惑星を離れるときが来たようだ。」

「なぜ?」イワンは本能的に妻の手を握ってたずねた。「私達はここ ネレスで完全に幸福なのに。」

「カウトーンはキャメロットに属する。これは彼の運命だ。」カウ・トーンは 主張した。

けれども、ディスペイアー夫妻は動じなかった。「申し訳ないが、私達は 何カ月も前にネレスに留まることに決めたのだ。」イワン・ディスペイアーの 声はきっぱりとしていた。「ここがカウトーンの成長する場所だ。子供にとって ここ以上の世界はない。彼は親しい人々や自分を愛する両親の保護のもとで 成長するだろう。」

セリナはなぜ二人の男がそれほど争うのか理解できなかった。彼女は 事態を収めようとしたが、カウ・トーンは主張を強めた。

「おまえは彼の運命に耐えることが出来ないだろう。」

「彼の運命について、あんたが何を知っていると言うのだ。」イワンは 詰問した。「彼はここで成長し素晴らしい少年時代を過ごす。もちろん、 キャメロットでもそうかもしれないがネレスの方が理想的だ。友よ、 理解してくれないか。」

「自分を誤魔化すな、テラナー。おまえは事態の進展に耐えられない。」

カウ・トーンの言葉は堅かった。ディスペイアーは怒り、攻撃的になった。 彼は赤肌の異星人に直ちに家を出るように命じた。カウ・トーンは軽べつした ような笑いを浮かべてディスペイアー家を後にした。カウトーンは再び 泣きだした。セリナは部屋に走り込んで子供を手にとろうとしたが、ジルは 抵抗した。

「私の息子を渡して頂戴。」セリナは友人に叫んだ。彼女は無言でセリナを 見つめ、少年を突き返した。そうしてジルは泣きながら家を出た。

「彼らをもっとしばしばもてなすべきだったのに・・・。」イワンは皮肉に述べた。 彼は手をセリナの肩に回して抱き寄せた。

*

の後数日間はカウ・トーンの姿は見えなかった。ジルでさえディスペイアー 夫妻を避けていた。

ロン・ホーレスはイワンにジルが彼に向き合って一緒に寝たいと言っている 事を話した。彼女は自信の赤ん坊を持つと言う考えに取りつかれていた。 彼女はカウトーンを崇拝し、彼女の若様と呼んでいた。ブリンク医師は 数日間彼女を治療し保護観察下に置いていた。

エディ・アラバンが研究室にいるイワンに会いに来た。老人は聖書と十字架を 持っていた。

「あんたと話さねばならない、イワン。」

ディスペイアーは実験を終え同僚を熱心に見た。「何かあったのか?」 彼は気遣ってたずねた。「あまり調子が良くないようだが。」

老テラナーは困惑して部屋を見渡した。「今日はセリナと赤ん坊に会いに 来た。」

「彼女らがどうかしたのか?」イワンは神経質に聞いた。

「いや、何もない。しかし、赤ん坊を手にしたとき、何か悪魔がそこから 来るのを感じた。」

ディスペイアーは目を丸くした。あらゆるものが彼の周りを跳びはねる ような感じを覚えた。「小さいカウトーンの何処が悪魔なのだ?」

「全てが」エディ・アラバンは真面目に言った。彼は聖書を開き数節を 読み上げた。 「 また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と 七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神を けがす名があった。

私の見たその獣は、ひょうに似ており、足は熊の足のようで、 口はししの口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と位と大きな 権威とを与えた。

また、人々の前で、火を天から地に降らせるような大きなしるしを行なった。

また、あの獣の前で行なうことを許されたしるしをもって地上に住む 人々を惑わし、剣の傷を受けながらもなお生き返ったあの獣の像を造るように、 地上に住む人々に命じた。

それから、その獣の像に息を吹き込んで、獣の像がもの言うことさえも できるようにし、また、その獣の像を拝まない者をみな殺させた。

また、小さい者にも、大きい者にも、富んでいる者にも、貧しい者にも、 自由人にも、奴隷にも、すべての人々にその右の手かその額かに、刻印を 受けさせた。

ここに知恵がある。思慮ある者はその獣の数字を数えなさい。その数字は 人間をさしているからである。その数字は六百六十六である。」

ディスペイアーは友人の朗読に特に注意を払わなかった。「なぜあんたは 聖書を読んでいるのだ?」彼は急にたずねた。

「わからんのか?あのカウ・トーンは顔にカウトーンと同じ印を持って おるのだぞ。」

ディスペイアーは肩をすくめた。「偶然さ。」

「違う!」エディは叫んだ。「彼は反キリストで、我々みんなを滅ぼしに 来たのだ。」彼はイワンの手をつかんだ。「わしを信じろ。」

「もう聞きたくない。出ていってくれ。」

しぶしぶエディは従い、出ていった。その後再び、この件についてイワンに 接近を試みたが、彼はエディの精神安定のため直ぐに医者を呼んだ。

*

ウ・トーンの船はネレスを離れある無人星系に飛んだ。H型の宇宙船は 荒れ果てた惑星に着陸した。青い球体に囲まれた第二の宇宙船が すでにそこにいた。

カウ・トーンは自分の船を離れもっと大きな船にゆっくりと歩み寄った。 入り口が開いてやはり黒い服装で黒いマントをまとった生物がカウ・トーン に向かって浮遊してきた。

話せ。」それは不吉な声で言った。

「ついに、我々は深淵の騎士どもに対する有効な敵対者を得ることに なるでしょう。」カウ・トーンは穏やかに話しはじめた。とはいえ 彼の口調は落ち着いて熟考した様子であった。

「それで、その子供は生まれたのか?」黒い実体はたずねた。

「はい、マスターよ。ようやくわれらの復讐ができます。

黒マントの生物はカウ・トーンを見つめた。「丁度30年で我々は 強力な 同盟者を得ることになろう。その時までに、彼に何事が起こっても ならん。なんびと足りともカウトーン・ディスペイアーの運命に立ちふさ がることの無いように。」

「解りました、マスター。」

「カウ・トーン、宇宙にはじきに新しい秩序が築かれよう。そしてこの 少年は我らの最も危険な敵を倒し、我らを助けてくれるであろう。」

これがその生物の締めくくりの言葉であった。黒い生物は宇宙船に浮遊して 戻り、宇宙船はわすか数分後に惑星表面を離れ広大な宇宙に消えた。

考え込んだカウ・トーンが残された。彼のマスターの示唆は間違えようの 無い物であった。カウトーン・ディスペイアーの運命に立ちふさがるものは なんびと足りとも除かねばならない。カウ・トーンは今や何をすべきか 知った・・・。

*

日後のある夜、イワンはエディからの電話を受けた。彼はディスペイアーに 謝り、もう一度、今度はロングトンの市内公園で会いたいと頼んだ。 イワンは同意し老テラナーと会った。彼は目にみえてびくびくしていた。 目には恐れと狂気が宿っていた。

「来てくれてありがたい。」 エディは言ってキャメロット人の肩をつかんだ。

「何が望みだ?」

「テラ博物館にある短剣を手に入れよう。」エディは説明した。「それで 反キリストを殺すことが出来る。」

「あんたはカウトーンの事を言っているのか?気違いめ。もう聞き飽きた。」

ディスペイアーは公園から歩き出した。エディは不可解な言葉で彼を呼び かけたが、イワンはすぐにグライダーの所に到着し帰宅した。

後には聖書をわしづかみにしたエディが残された。嵐が吹き荒れアラバンは 人気の無い公園をあても無くさまよった。嵐は強さを増した。木々は老テラナー が下を通ったとき脅すようにうめいた。突然、雷光が1本の木を直撃し 枝を吹き飛ばし、それがエディの前に落ちた。

パニックに襲われて老人は公園を走りぬけた。彼はネレス人の教会が安全 であろうと期待してそこを目指した。周りの鉄のフェンスは閉じられていた ので彼はよじ登った。再び大地に降りるや否や雷光がフェンスを直撃した。 エディは絶叫をあげた。彼はドアまで走っていったが鍵がかかっていた。 気違いのように木のドアを叩いたが誰も開けてくれるものはいなかった。 次のドアに走っていった、・・・、そこも閉まっていた。

彼は表庭に行き教会の屋根を見た。頂上には何か象徴的な意味を持つ ポールが立っていた。ひどく興奮してエディは周りを見たが安全な場所は 無かった。エディは見上げ、死が彼めがけて真っ直ぐにやってくるのを見て 悲鳴を上げた。先端が彼の体を貫いた。ポールの端に支えられてアラバンの 生命の無い体は前庭に立っていた。

最初の敵対者は倒された・・・。

*

の夜遅く、ルラッツ・ヨマーは個人的にディスペイアー夫妻を訪問し 彼らの仲間の死を告げた。ヨマーはこれは容易ならざる仕事であると 解った。

エディ・アラバンの死は彼にひどくこたえた。キャメロット人と自称している 異星人達はネレスにとって特別な事を意味していた。もちろん、ネレス人は 彼らを神だとは考えていないが、異星人はなおあらゆる物の上に位置していた。 しかし、見せかけの事故が示すように異星人と言えども死すべき生き物である。

他のキャメロット人たちは直ちに集まって今後について議論した。イワンは エディの警告とカウトーンについての彼の考えを話した。当然ながら誰もが エディは発狂し事故の犠牲になったという点で一致した。

ロン・ホーレスだけは偶然の存在を完全には信用しなかった。彼はエディの アパートに行き、家捜しをした。彼が見つけ出したものは彼の疑いを深めた だけであった。エディのメモキューブの一つにはカウ・トーンについて 彼が知り得た全ての情報が入っていた。エディはカウ・トーンが悪魔の使者で 反キリストの誕生の手助けをしていると確信していていた。ホーレスは天国や 地獄の存在を信じてはおらず、何か合理的な説明があると感じた。 それでも、今や彼はカウ・トーンの危険性に思いを馳せた。

彼は直ちに異星人の宇宙船に行こうと心に決めた。船は鉄道の直ぐ隣の空き地に 立っていた。支線が荷物の積み込みのためにカウ・トーンの船の側壁の荷物入り口 につながっていた。どのような種類の荷物かホーレスは知らなかった。船には 誰も乗っていないように思えたので、ロンは近づいてみた。

彼は入り口の200メートル前に止まっている1台の有蓋貨車のところにやってきて ドアを開けたが、中には何もなかった。失望して入り口に辿り着いた。入り口は しまっていたが、貨車は入り口のカバーをぶちやぶれそうであった。彼は貨車に 戻り、押そうとしたがうまくいかなかった。そのためには機関車が必要であった。 突然、彼はカウ・トーンが第二のより高い入り口からあらわれたのに気がついた。 ホーレスの背後で機関車が動き始めた。線路の分岐点目掛けてそれは真っすぐに 進んでいった。

「此処で何を望んでいるのか、キャメロット人?」

「真実だ!おまえがエディを殺したな!」

線路のスイッチが自動的に入った・・・。

カウ・トーンの目はロンを貫くかのようであった。キャメロット人は近づく 機関車に気が付かなかった。

「おまえがカウトーンの運命を妨げることは許されぬ。」カウ・トーンは 言った。

ロンは頭を振った。「わからない、・・・、カウトーンに一体何の関係が あるというのか?」

「エディ・アラバンは真実に近づいていた。」

「反キリストなんてありえない。」ロンは主張した。「地獄や魔王も。」

「善のための要塞があるのと全く同様に絶対的な悪の場所も実際存在する。 もっとも、お前達の原始的な神話で言われている物とはかなり違っては いるが。おまえはそれを理解出来るほどは進歩していない。」

「何だって?」

ホーレスはカウ・トーンが何を言おうとしているのかわからなかった。機関車は 貨車に向かってスピードを上げ、これに衝突して疾走させた。貨車はロンにおそい かかり、彼は悲鳴を上げはじめた。

貨車が入り口に向かって疾走する間、空気の抵抗は彼を疾走する貨車の 正面に捕らえた。

ロンは悲鳴を上げた。「ノー!」何度も何度も。しかし誰も彼を助けることは できなかった。貨車は入り口でぴたりと止まり、彼はその間で押しつぶされた。

第二の敵対者は倒された・・・。

*

ンの遺体は鉄道の作業場で見つかった、カウ・トーンとのはっきりした 関連はなかった。

調査チームは心底驚いた。二人の死の結果、惑星ネレスはその興味をなくした。 今やイワンは密かにカウ・トーンが2つの事故に何らかの関係があるのでは と疑っていた。

数日後、カウトーンは病気になった。初めての風邪であった。ブリンク医師は 薬を与え、血液のサンプルを取った。

その夜遅く、彼はまだ実験室にいた。というのはジル・リーカンの血液に 人工的に作られた異常を発見していたからだ。明らかに何者かが彼女の 遺伝子を操作していた。彼はまだ彼女の細胞構造を正確に決定できていなかった。

正常な細胞構造と比較するための彼女の血液を小さなカウトーンのそれと 比較したが、彼の血液もまた同じ異常を示した。

はっきりさせるために、彼は他の全てのキャメロット人のデータと比較したが 突然変位は二人にだけ起こっていた。それゆえ、誰かがジルの妊娠のあいだに 彼女とカウトーンの細胞を変化させたに違いない。あるいは、それ以前に ジルが変位を受けており、それが胎児に影響したのか。

ブリンク医師は直ちに両親にこの発見を告げようとした。彼は15階に居たので エレベーターに乗った。どうかすると、この原始的な昇降機は彼を不安にさせるが ネレス人はまだ反重力を持っていなかった。エレベーターは突然よろめき、ついで 彼を最上階まで引き上げた。ボタンを押したが効果はなかった。エレベーター にはポジトロニクスも何もなかった。

「原始的なくず物め。」ブリンクは罵った。

エレベーターがシャフトの頂上に付いたとき、急に落下し20階下で止まった。 ブリンクは投げ飛ばされ天井にはねつけられた。喘ぎながら彼は床に倒れた。

急な停止で鋼鉄のケーブルが滑車からはぎ取られ再びシャフトの頂上まで ひっぱられた。そして、もう一度落下しナイフの刃のようにエレベーターの キャビンを真っ二つにした、・・・ブリンク医師と共に。

第三の敵対者は倒された・・・。

*

「我々の仲間の3人が2日の間に死んだ、・・・この背後には誰かがいるに 違いない。」マイケル・コーチ(Michael Koch)は興奮して叫んだ。 ひげをたくわえた男は友人達の死でショックを受けていた。

「ジルは日々悪くなっている。」ブルー人のヴェルヴィラエは言った。 「もうこれ以上この惑星に留まりたいという者がいるとは思わない。」

「ネレス人を非難すべきではないのは明らかだ。」イワンは惑星の原住民を 弁護して言ったが、他の人々は彼の意見にくみしなかった。

「我々は他のメンバーとも話した。」コーチは言った。「我々は直ちに この惑星を離れ、キャメロットに帰還する。」

イワン・ディスペイアーはその考えに反対しようとしたが無駄であった。 調査グループは既にあと数週間でネレスを離れることに決定していた。 ディスペイアー夫妻にとって、一緒に行くかネレスに残るかを決定することは 差し迫った問題であった。

イワンとセレナは一晩中起きて、将来について話し合った。セレナはネレスを 愛しておりそこに留まることを望んだ。夫も彼女に同意した。

翌日、ディスペイアー夫妻の決心は他のキャメロット人に伝えられた。彼らは 熱狂的ではなかったが、彼ら自信の決心は堅かった。彼らはネレスを離れる であろう。

奇跡のようにジルの様態が好転した。彼女はセレナにカウトーンを公園の散歩に 連れ出すことを提案した。公園にはネレス現住の動物の小さな動物園があった。 彼女らはこの機会を使って事態を話し合った。

「あなたの事情を複雑にしてご免なさい。」ジルは友人に詫びた。セレナは ずっと前から彼女を許していた。この困難な時期に彼女は信頼できるよい 友人が必要であった。しばし彼女らは互いに抱き合い、そして散歩を続けた。

突然、カウ・トーンが彼女らの前にあらわれた。始め、セレナは他の方に行き 彼を避けようとしたが、カウ・トーンは彼女を先に見つけていた。

「貴女の賢明な決定にお祝いを言いたい。」いつもの冷静な暗い声で、彼は 話し始めた。

「何の決定ですって?」彼女は困惑してたずねた。

「キャメロットに帰ること。」

「あなたは間違っています。他の人は出発します。イワンと私はネレスに 残ります。」

カウ・トーンの顔は仮面のように堅くなった。彼の視線はキャメロット人に あざけりを示していた。3人は屋外の動物区域のかたわらを歩いていた。 カウトーンのベビーカーは反重力で浮いていて金網の前に止まっていた。 下のくぼんだ囲い地にはネレスの狼がいた。それはテラの狼よりずっと危険で あった。牙はより大きく、厚い自然の鎧で覆われていた。うなり声を上げて 安全に隔離されたテリトリーを自由に徘徊していた。

「貴女の決定を考え直すのが賢明だろう、セリナ・ディスペイアー。」

「それは脅しかしら?」

「事実だ。」

ここでジル・リーカンが割って入った。彼女は友人に良いアドバイスを 与えようとした。「セリナ、あなたは本当は一緒にキャメロットに行くべきよ。 そのほうがカウトーンのためよ。」

セリナは怒り始めた。彼女はカウ・トーンに怒ったのではなかった。というのは 彼はちょくちょく彼女の生活に干渉してきたからだ。今中傷している友人に 怒っているのであった。

「私達は此処に留まるの!それだけよ!私は帰るわ。」

「すぐにわかるだろう・・・!」カウ・トーンは悪魔のような小声で忠告した。

ベビーカーが突然動き出し、狼の囲い地の中に浮遊していった。セリナは 金切り声を上げて助けを求めたが係員は一人も見えなかった。遠ぼえし、 うなりながら狼たちはベビーカーのまわりに走りより噛み付いた。セリナは 見るに耐えなかった。彼女はジルに助けを求めるように叫んだが、厚かましい 友人は何もしなかった。セリナはフェンスをよじ登りカウトーンのもとへ 走った。狼たちはうなり声をあげ母親に飛び掛かりだした。彼女の手や足に 噛み付いた。テラナーは大声で叫んだ。数人のネリス人が彼女のところに 辿り着こうとしたが、セリナに出来たことは彼らにカウトーンを手渡すこと だけであった。

狼は彼女をずたずたに引き裂いた。その後で係員たちがやってきて 狼を麻酔銃で眠らせた。セリナにとって、助けはおそすぎたかみ傷は 重傷過ぎた。

カウ・トーンとジル・リーカンは恐怖の場所からカウトーンと離れた。

*

ワンは妻の死を聞かされて打ちひしがれていた。誰も彼の痛みを 癒すことはできなかった。小さいカウトーンでさえも。

いまや、彼をネレスに結び付けるものは何も無かった。セリナは家の 隣に埋葬された。カウ・トーンもまた惑星を離れた。彼はキャメロット人 たちに別れも告げなかった。彼は現われたときと同じように突然消えた。

8人のキャメロット人が残った。4人はネレスで死んだ。ルラッツ・ヨマー は悲劇的な事件に遺憾の意をあらわした。彼はイワン・ディスペイアーに 心からの別れの挨拶を告げ、幸運を祈った。

<ホーキング>はNGZ1263年3月17日に惑星ネレスを離れ、二度と戻ることは なかった。

船内の気分は陰うつであった。それを和らげるものは何もなかった。

飛行2日目、見るからに動転したマテウ・コーチがイワン・ディスペイアーの 船室にやってきた。「あんたにとって楽しくないかも知れないことを 発見したぞ。」彼は言い、緊張が声に表れていた。

「一体なんだ?」イワンは疲れた声でたずねた。

「ブリンク医師の個人的な荷物を整理していて一つの音声記録に出会ったんだ。 何者かがジルとカウトーンを遺伝子的に変えたんだ。ブリンクは突然変異した 細胞構造について話していた。」

その言葉はイワンを疲労からたたき起こした。彼はカウトーンの部屋に 走り込んだ。赤ん坊は寝ていた。平和で無邪気な光景であった。

「結局、エディとロンが正しかったのか?」イワンはたずねた。「カウトーンは 暗黒の勢力に選ばれた子供なのか?カウ・トーンは何の役割を果たしたんだ? 彼がみんなを殺したのか?」

多くの疑問はマテウ・コーチには答えられなかった。「なぜ狼どもは カウトーンをおそったのか?」彼は首をひねった。「おそらく彼には 守護天使・・・守護悪魔と言って良いだろう、がいたのか?」

「ありえない・・・!」

突然爆発が船を揺らした。ブルー人ヴェルヴィラエとウニト人ズウリル(Zuriil) が二人のキャメロット人のもとに走りより実験室で爆発があったと報告した。 補修ロボットが突然プログラミングを無視して実験室を気ままに爆破したのだ。 その結果、乗員が2名殺された。通話回線を通して航海長のハドソン(Hudson)が 呼びかけていた。彼は金切り声で助けを求め、そうして叫び声は沈黙に取って 変わった。補修ロボットは今や船内の誰をも攻撃していた。

「何かしないと。」コーチは他の人間に呼びかけ部屋を出た。

1対の補修ロボットがウニト人を攻撃し回転ノコギリに似た道具で腕に深い傷を 負わせた。

「この船は呪われている。」ヴィラエ(Vilo"a")は叫んだ。「あらゆる 生き物の名において、悪魔が船に乗っている。」

いたるところで爆発が続いた。

ロボットたちは無防備なブルー人に攻撃をかけ、触手で覆いつくした。その力は 細い首には強すぎた、・・・、首を切り取られブルー人は即死した。ズウリルは 高い階層に走った。ロボットの1体が彼を追った。あえぎながらパニックに襲われ て彼はエアーロックに辿り着いた。そこでロボットからの逃げ場所を探した。 しかし、人造知性体はドアを閉め部屋の圧力を上げた。ズウリルはガラスを 拳骨で殴ったがドアは反応しなかった。そして、彼は硬強度金属棒を手にとり 窓を壊した。急速な圧力均等化によりウニト人の体は引き裂かれた。

この時点まで、イワンとコーチはロボットに対して身を守ることが出来た。

「恐怖を終わりにしてやる。」ディスペイアーは固い決意で言った。彼は 大きなナイフを見つけてカウトーンの部屋に走っていった。

コーチは制御室に向かい救援信号を送ろうとした。彼は反重力リフトに飛び込んだ。 それは彼を3階層上の制御室まで送りとどけた。しかし、彼が飛び出そうとしたとき、 反重力が突然切れて彼は落下した。彼は衝突を生き延びたが全身の骨を折って しまった。およそ3分後、コーチの心臓はもはや鼓動を続ける力を無くしていた。

宇宙船は自分自身の不思議な意志を発達させスピードを上げた。出来るだけ早く キャメロットに着こうとしているのは明らかだった。

あてもなくさまよいながらジルはカウトーンの部屋に入ってイワンの手に ナイフを見た。「何をしようというの?」彼女はたずねた。

「カウトーンを殺すんだ。彼が全てのことに責任があったんだ。カウ・トーンの 計画を終わりにしてやる。」イワンの目に涙があふれた。「なぜ、かれが? なぜ、あらゆる人々の中でかれが未知の宇宙勢力のゲームでの駒にされた んだ?なぜ彼の妻はゲームのために死なねばならなかったのだ?なぜかれは今 自分の息子を殺さねばならないのか?まともじゃない・・・。」

「気違い!」ジルは叫んで彼を捕まえたが、壁に投げ飛ばされた。気を失って 彼女は床に崩れ落ちた。

その間にカウトーンは目を覚まし大声で泣きはじめた。イワンは息子の悲しげな 目を見た。赤ん坊は口を開けどもりながら言った。「パ・・・、パパ・・・!」

カウトーンが始めて喋った。父親の顔には涙が流れた。小さな少年に罪はないの は確かだ。そして、彼は殺人とカウ・トーンのことを考えた。カウトーンは みんなの死に責任のある私生児の名前で生まれてきたのだ。彼はナイフを振り あげ、まさに振り下ろそうとしたが、エネルギービームが背中に命中した。 ロボットの1体がイワン・ディスペイアーを撃ったのだ。彼はナイフを落とし 崩れ落ちた。すでに死んでいた。

ジルがやってきて甲高く笑った。彼女は狂っていた。<ホーキング>は キャメロットに到着した。船上のキャメロット人は全て死体になっており 二人だけが生き延びていた。小さな子供と運命についてのうわごとを喋る 狂った女性の二人。

子供はイワン・ディスペイアーの兄弟のもとに送られ、最終的にキャメロット に住むことになった。それが彼の運命・・・。

NGZ1291年

ガタス

<バーダン>は6隻の戦艦からなる艦隊を引き連れ超空間を疾走しフェルト星系に 到着した。ブルー人の主要惑星ガタスはこの星系にあった。

カウトーン・ディスペイアーはキャメロット人の基地の位置を知っていた。 再び巨大なシャトルが作戦展開のために用意された。今度はディスペイアーは 自ら作戦を指揮しようとした。基地はガタスの人跡未踏の山岳地帯の一つに あったので、2隻のシフトがシャトルに積み込まれた。

「サー、本当に作戦に参加されるおつもりですか?」コーレイ提督が指揮官の安全 を気遣ってたずねた。

「無論だ、提督。」ディスペイアーは断言した。「艦隊を太陽に向かって進め、 取り決められた信号を待て。」印象的な人物はシャトルに乗り込み、シャトルは すぐに離陸した。優れた対探知フィールドのおかげでシャトルは見とがめ られることなく基地に着いた。

シフトはシャトルを離れキャメロットのステーション、大地にそびえる直径 50メートルのドーム、にゆっくりと接近した。基地の残りは地下にあった。 最初のシフトはドームから500メートルの位置を占め砲撃を始めた。わずか 三発の爆発でドームは破壊された。今度は第二のシフトがそれに向かい 地上部隊を降ろした。彼らは灰色の宇宙服で完全に覆われていた。顔の部分さえ 仮面のような覆面で隠されていた。かれらは混乱してほとんど抵抗できない キャメロット人たちに砲火を開いた。ガタスのキャメロットステーションは 内部に不死者の組織の代表者数100名を要する重要基地であった。彼らは モードレッドの圧倒的に優れた兵力に抵抗できなかった。彼らは勇敢に地上部隊 に対し自衛したが、敗北は避けられなかった。指導者達は降伏した。

キャメロット人たちは武器を地上に投げ捨て手を上げた。ディスペイアーは 通路をゆっくりと歩き、死体の側を通り過ぎた。彼の視線はまばらな髪の 灰色の顎ひげの男に注がれた。彼は今なお冷静さを保っていた。

「私はトロスト・レダン(Trost Redan)、キャメロット将校の長だ。 抗議する、貴殿の卑劣な・・・。」

「これは儀礼的な呼びかけではない、レダン司令官。」ディスペイアーは 彼をさえぎった。彼は生存者についてたずね、女性2名子供2名を含めて 全部で75名であるとの返事を得た。「母親と子供は行ってもよろしい。 おまえ、レダン、も一緒だ。ペリー・ローダンや他の不死者どもに告げよ。 モードレッドが彼等の運命を握っている。キャメロットは破壊されるだろう。」

レダンは聞いたことが信じられなかった。彼は黒い鎧のこの異人に素手で 殴りかかろうとした。「一体全体、おまえは何者だ?」

「奴等に告げよ、カウトーン・ディスペイアーがキャメロットを破壊 するだろうと。」

その男と女子供たちはシャトルに連行された。

残りのキャメロット人たちは一列にならべられた。

「サー、キャメロット人どもを如何しましょうか?」一人の下士官が たずねた。

「処刑せよ!」

将校は息をのんだ。「全員をでありますか?」

「全員だ!」

「イエス、サー!」

彼は直ちに取り掛かった。熱線銃が構えられた。キャメロット人たちは銃に背を 向け、そして全員射殺された。

死体はしわになった。ディスペイアーは満足してこの光景をおった。ガタスでの 彼の使命は終わった。全キャメロット人が殺された後で地上部隊は撤収し、 <バーダン>はフェルト系を離れた。

*

存者を乗せたシャトルは5日後キャメロットに到着した。彼らは直ちに 保護された。レダンはすぐにホーマー・G・アダムスに報告をすることが できた。その間に,<タクヴァリオン>も不死者の惑星に到着した。 ツアリトの事件のためジョーク・カスカルとサンダル・トーク(Sandal Tolk) は非常警戒状態にあった。今ガタスが同様に攻撃されたと知って全くの ショックに襲われていた。

アダムス、カスカル、トーク、サム、そしてアウレクは会議室で座って レダンの報告を辛抱強く待っていた。

キャメロット将校の司令官は弱々しく憔悴しきったように見えた。彼は 知り得た事を話し、「私の部下の残りは殺されました。私は不死者達に カウトーン・ディスペイアーの事と彼とモードレッドがキャメロットを 破壊するであろうということを伝えるように命じられました・・・。」と 言う言葉で報告を終えた。

部屋はしばし静寂が支配していた。誰もがお互いをぼんやりと見ていた。 彼らの誰もモードレッドやカウトーン・ディスペイアーという名前が 何を意味するものか知らなかった。アダムスを除いては。彼は蒼白な顔で いすに腰掛けていた。

「モードレッドはアーサー(Arthur)の息子でキャメロットの最悪の敵だ。」 彼は説明した。「カウトーン・ディスペイアーが何者かは知っている。 彼はかつてはキャメロット人だったが、我々は彼が死んだと思っていた。」 彼は考え深げに付け加えた。

「それで、彼は明らかにまだ生きていていかなる理由にせよ復讐のために 現われたというわけか。」ジョーク・カスカルは言った。

「彼という注意深く対処すべき敵を持ったわけだ。彼を過小評価しては ならない。」

*

ネス・コーレイ提督は走ってカウトーン・ディスペイアーの 暗くスパルタ風に飾られた船室に走り込んできた。

「サー、ナンバー・ワンがあなたとハイパーカムでの通話を望んでらっしゃいます。」 将校は言った。

「よし、ハイパーカムを繋げ。」

ディスペイアーはシートから立ち上がりプロジェクターの前に立った。モードレッド の指導者の立体像が現れたとき、ディスペーアーは彼のマスターに頭を下げた。

報告を、友よ。」ナンバー・ワンが静かで不吉な声で言った。

「ツアリトとガタスの基地は破壊されました。不死者どもはいまや我らの 存在を知っております。」

「良くやった、カウトーン・ディスペイアー!しかしまだまだ数多くの キャメロット基地を破壊せねばならない。」

「はい、マスター。次の目標をプロフォスに定めました。」

「不死者どもはシャバッザに対する防衛にかかりきりになっている のでキャメロット人の力は弱まっている。」

「そうであっても、やつらは我々に対抗するためあらゆることをやって 来るでしょう。」

「やつらがあえてそうするなら、抹殺されるであろう。情け容赦なく・・・!」

終わり

キャメロットの前にはカウトーン・ディスペイアーとモードレッドという危険な敵 が立ちふさがった。黒いキャメロット人についてパート2「カウトーン・ディスペイアー と言う名前の少年」でより詳しく知るであろう。この小説は1999年8月2日、 やはりニールス・ヒールゼランドによって書かれた。



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